政府が「中小企業版」私的整理の
新ガイドラインを検討している訳
新型コロナウイルスの影響を受けた企業への官民融資額が計50兆円に迫る勢いだ。これを受け、政府・与党は、コロナ禍によって中小企業が抱える過剰債務問題の解決に向けた中小企業版の私的整理ガイドラインの検討を進めている。
議論は進行中だが、浮かび上がるのは、地域金融機関がこれまで積み残してきたいくつもの課題だ。
既存の企業向けの私的整理ガイドライン(「私的整理に関するガイドライン」)は2001年に策定された。不良債権処理を加速させるため、緊急経済対策の一環として導入されたものだ。
個人版の私的整理ガイドライン(「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」)は、その10年後の11年、東日本大震災を受けて策定された。今年4月から自然災害ガイドライン(「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」)に移行している。
そして21年、コロナ時代の中小企業版私的整理ガイドライン――。こうしてみると、私的整理の枠組みは10年ごとに強化されている。法令にのっとり、裁判所の関与の下で行われる法的整理が、企業経営や個人家計の破綻に関するその時々の「時代の要請」に、必ずしも応えられなかったことがうかがえる。
コロナ禍は、公権力が、時に世界レベルで人々の移動や密集、営みの自由という私権を制限せざるを得ないことを世間に対して突き付けた。
その影響で生じる企業業績の急激な悪化は、「運が悪かった」「債権債務関係の私的整理は民事なので、企業間でどうにかしてください」では済まされない。公共の福祉のため、国家レベルで私権を制限せざるを得ないのであれば、受けたダメージを和らげることも国の責任だ。