生存戦略#11Photo by Yoko Akiyoshi

コロナ禍を受け、外食やアパレルなどの業界で経営破綻が相次いでいる。そして恐ろしいことに、破綻の波はまだ序の口、本当の危機はこれからなのだという。特集『外資コンサル総力解明 7業界の生存戦略』(全12回)の#11では、JALやヤオハン・ジャパンなど大型倒産に関わってきた瀬戸英雄弁護士が、破綻ラッシュのシナリオを読み解く。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

コロナ倒産の本番は
9月からやっと始まる

瀬戸英雄弁護士瀬戸英雄弁護士は、JALの経営破綻で、管財人統括を務めた。企業の死と再生に数多く関わってきた、倒産法務の第一人者だ Photo by Y.A.

――新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、経営破綻が相次ぎました。

 いやいや、大変なのはこれからです。倒産が本当に増えるのは下期に入ってからですよ。

――9月から、また経営破綻が相次ぐのですか。

 そう。夏ごろから徐々に大変になってくると思います。感覚的な見通しだけれども、上期は何とか、政府の緊急対策や今までの経営資源のストックでやり過ごせます。頭を低くして、嵐が通り過ぎるのをじっと待つような姿勢でも、健全な企業なら何とか対応できる。

 すでに起こっている「コロナ倒産」と呼ばれるものの中には、最後のとどめが今回の問題だったというだけで、本質的にはコロナが原因ではないケースもあります。先日も上場企業が破綻しましたよね。

――レナウンですね。

 これまで順調に業績を上げてきた企業なら、一時的に売り上げが8割ぐらい減少しても、すぐには経営破綻しません。例えばホテルは今、大変なセクターの一つですが、大阪のホテルなどはコロナ前から、かなり価格破壊が起きていた。東京五輪・パラリンピックを当て込んだ設備投資が進んだ結果、過当競争に陥っていたのです。それがコロナで一気に客がいなくなって、逆回転したのです。

――ここまでの経営破綻は多分に、構造的な問題が噴出した面があると。

 そういうことです。それでも上期は、多くの企業が何とか問題を噴出させずに済んでいます。それは官民挙げての緊急対応が支えているからです。大手企業であれば、まずは金融機関の融資枠を確保しました。金融庁の指導もあって、金融機関の審査は平時よりも通りやすくなっているようです。中小・零細企業も持続化給付金や日本政策金融公庫の特別融資だとかが生命線をつないでいる。

 しかし、経済活動そのものが今でも停滞している以上、緊急対応だけで企業をいつまでも持たせられるわけがありません。公的な融資は、通常なら基準に満たないところにまで貸しています。メガバンクでも平時なら「いちげんさん」には貸さないのに、今はコロナだからと言って貸している。官民挙げて全面的に企業を支えなきゃならんとなっている。

 これらの緊急対応はいずれ金融の問題、ひいては国家財政の問題に変わります。だからコロナの直接的な影響が少し落ち着いて、経済活動が再開したときに、企業の選別はどうしてもやらざるを得ない。そこからは生存競争です。