大恐慌襲来#18
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商社の原料調達力と経営ノウハウがあれば、腐りかけの身売り企業でも再建できるかもしれない。アパレルや小売りといった、これまでの得意分野だけではなく、自動車部品メーカーへの資本参加にも食指を動かし始めている。特集『大恐慌襲来 「7割経済」の衝撃』(全22回)の#18では、虎視眈々と業界の再編成を主導する商社の狙いに迫った。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子、新井美江子)

20年前の商社不要論を跳ね返した
「事業投資」モデルの限界

 総合商社の業績が急降下している。新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済が失速。商社の収益をけん引してきた資源事業の市況が悪化し、20年1〜3月期に巨額の減損損失を迫られたからだ。商社にとって、資源に替わる新たな収益の柱を設けることが課題となって久しいが、今こそ、その課題解消の必要性が高まっている。

 よく知られた話だが、「総合商社」という特異なコングロマリット業態は日本にしか存在しない。景気変動やビジネスの激変などの大きな危機に直面する度に、商社は変幻自在に業容を転換することで生きながらえてきた。

 1990年代後半の「商社冬の時代」は、最も厳しい試練だった。それまでの商社ビジネスの主役はトレーディング。輸出入など、モノを右から左へ仲介するときにフィーを得る“口銭商売”に限界が見えていた。ちょうどIT革命が叫ばれていたときだ。メーカーがITを使えば直接、海外などの顧客にアクセスできるようになり、役割の消えた商社は“中抜き”されるという商社不要論が高まった。

 実際に、金融危機やITバブルの余波を受けて商社の経営は窮地に立たされる。2003年に旧日商岩井と旧ニチメンが経営統合するなど、多くの商社が事業再編に踏み込むレベルのドラスチックなリストラを敢行した。

 そんな危機にあった商社が、トレーディングに替わるビジネスモデルとして掲げたのが「事業投資」だった。事業投資は、自らの不要論を跳ね返そうと導き出した解でもあった。当時に種まきして開花した投資の代表例が、鉄鉱石や天然ガス、石炭などの資源投資であろう。また、それまで商社が得意としてこなかったコンビニエンスストアやスーパー、外食など、リテール分野への投資を加速させたのもその頃のことだ。

 それから20年。資源事業に依存する収益構造を今度こそ、転換させなければならない。事業投資で稼ぐビジネスモデルにも「劇的な改良」が急務となっているのだ。

「“腐りかけ”の企業こそ美味しい――」。大手商社社員はそう言ってはばからない。折しもコロナ危機が長期化しつつあることから、あらゆる業界で身売り案件が続出しそうな雲行きである。商社にとって、身売り企業への資本参加は、事業投資モデルを“確変”させるチャンスになり得るのだ。

 幸運なことに、20年前とは異なり商社の財務体質は格段に改善しており、再編劇における買い手の主役としての素質は十分だ。また、コロナを転機にあらゆる業界でビジネスの常識やトレンドが変わる。潮目を読むのは嗅覚の利く商社マンが得意とするところだ。

 目下のところ、商社主導の再編劇が起きそうなのが、小売り、自動車、鉄鋼の3分野である。