スクエニの和田洋一社長(右)は、ソーシャルゲームのノウハウ吸収を狙う
Photo by Wakako Otsubo

 ゲーム会社のスクウェア・エニックス(スクエニ)が大きな賭けに出た。屋台骨の一つの「ファイナル・ファンタジー(FF)」を、ソーシャルゲームのグリーから配信するのだという。

 スクエニはグリーのライバルのモバゲー(ディー・エヌ・エーが運営)にもFFを提供しているが、キャラクターをマンガチックにするなどしてすみ分けてきた。ところが、今回は歴代のキャラクターや武器などをそのまま登場させる上、形式はソーシャルゲームの主流のカードゲームだ。ロワイヤル(戦い)を特徴とし、ユーザーは無料でスタートできるものの、有料のアイテム(武器など)を購入したほうが戦いに勝つのに有利になる。その競争心をあおるのだ。

 スクエニが「虎の子」(和田洋一社長)のFFをグリーに出したのは、ノウハウ吸収と海外展開が狙いだ。スクエニは「ソーシャルゲームに出遅れた」(アナリスト)のだが、ユーザーにアイテムを購入させたり、イベントなどを仕掛けながらゲームを続けさせるソーシャルゲームのノウハウは、スクエニ独自のクラウドでソーシャルゲームを展開するのに役立つ。しかも、グリーは海外展開に積極的なため、FFのソーシャルゲームの海外展開も夢ではない。

 業界内では「グリーはかなりいい条件を出した」といわれている。コンプガチャ問題から「ソーシャルゲームは怖い」という印象を与え、グリーは2012年4~6月期の売上高が前期比2桁減になった。有名なゲームで警戒心を取り除きたいところだ。

 未成年の課金問題など、ソーシャルゲームが抱える問題が解決されたわけではないが、スクエニは今が機とみた。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

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