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レビュー
パンデミックに翻弄されているあいだ、楽しみにしていた行事やイベント、やりがいのある大きな仕事が頓挫して、突然ストンと暗い穴に落ちてしまったような感覚だったのではないだろうか。ひとりで過ごす時間が急に増え、自分の生きがいとは、生きる意味は何なのかと、考え込むこともあったかもしれない。

『生きがいについて』を読むと、今も昔も人間の本質が何も変わっていないことを、改めて思い知らされる。本書が初めて刊行されたのは1966年、今から約半世紀も前のことだ。ハンセン病療養所での体験をもとに、「生きがい」についての思索を書き記した一冊であるが、今読んでも何ひとつ色褪せていないことに驚きを隠せない。生きがいというものが人間にとっていかに大事で、生死をも左右する重大な問題であるかが浮き彫りにされている。
新型コロナ対策において「命と経済活動、どちらを優先させるか」という論争は絶えず出続けているが、経済活動=生きがい、という見方もできるだろう。特に芸術や音楽など「活動を行うこと自体に喜びがある」という分野や、「店に立つことが生きがい」というような店主なども、そういった意味での死活問題を併せ持つ。旧約聖書には「人はパンのみにて生くるものにあらず」という言葉があるが、衣食住が足りることと生きがいの欲求が満たされることは、必ずしもイコールではないことは誰もが感じうるところだろう。