新入社員は長期目標を立ててはいけない理由Photo:123RF

やみくもに大きな目標を立てても
意味がない

小宮一慶・小宮コンサルタンツ代表小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

「散歩のついでに富士山に登った人はいない」。このコラムでも何度か紹介した私の持論です。散歩をしているうちに気がついたら富士山の頂上に立っていたという人はいません。富士山の頂上に立つためには、富士山に登るという目標を持ち、登山にふさわしい準備をして、一歩一歩、苦しくても目標に向かって歩き続ける努力が必要です。仕事も同じです。目的や目標をしっかり定めないと、必死に目の前のことをやっていても思ったところには到達しません。

 新入社員は、毎日精いっぱい仕事をしていると思います。この「精いっぱい仕事をする」という習慣を身に付けることはとても大事ですが、それだけでは、必死で散歩をしているだけなのかもしれません。富士山に登るためには、目標を立てて、実行するという習慣を積み重ねることが大事なのです。

 ただし、やみくもに大きな目標を立てても意味がありません。目標を設定して実行するという習慣を付けるためには、目標の立て方にコツがあります。

 よく聞くのは、長期の目標を立てて、それをブレークダウンして、短期の目標を立てましょうというアドバイスです。でも、会社や人生の経験の浅い新入社員に長期目標を立てることを求めることは難しいと思います。

 もっと難しい要求は、人生の目標を決めて、あるいは目的に目覚めて、そこからブレークダウンしようというこれまたよく耳にするアドバイス。論語には「五十にして命を知る」とあります。あの孔子でさえ50歳になってようやく天命を知ったというのに、普通の新入社員が、人生の目標、自分のあるべき姿や志などが簡単には分かるわけがありません。