ビジネスマンこそ「絵画・芸術を鑑賞」すべき、2つの理由Photo:123RF

絵画鑑賞・芸術鑑賞は
ビジネス感覚を磨く近道

小宮一慶・小宮コンサルタンツ代表小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 箱根の仙石原にあるポーラ美術館では、9月5日までレオナール・フジタ(藤田嗣治)の企画展「フジタ-色彩への旅」を開催しています。先日も訪問しましたが、通常、私は同じ展覧会を3回ほどは見るようにしています。私が同じ展覧会を何度も見る理由は「絵画鑑賞が好き」ということもあるのですが、毎回、新たな気づきもあるからです。そして、「美」について考えさせられるからです。経営者のお客さまには、絵画鑑賞(絵画に限らず芸術鑑賞)はビジネスにも役に立つという話をしています。

 当社(小宮コンサルタンツ)ではコロナ前の2019年に、英仏の主要美術館――ロンドンの大英博物館やナショナルギャラリー、パリのオルセー美術館、ルーブル美術館など見学をするツアーを企画し、経営者のお客さまたちをお連れました。優れた芸術作品に触れることは「直観力」を養うことにつながり、経営感覚を磨く上で有益という、私の持論からです。また、それとともに評価の高い芸術作品を通じて、多くの人が「美」と感じるものを知ってほしいからです。

 2019年に30人ほどのお客さまとオルセー美術館に行ったときのこと。現地で絵の勉強をしている日本人の方にガイドになってもらいました。その人は、ある画家の絵を指して、「嫌いなんです。分からないから」と正直に話してくれました。

 少し驚きましたが、私にも好き嫌いはあるし、それは構わないと思いました。お客さまには、芸術的に絵画の良しあしを分かろうとする必要はなく、それは自分の好き嫌いで決めればいい、ただ、世界的に評価されている絵をたくさん鑑賞することで、「世の中の多くの人が美しいと感じている絵」を実際に見て、それがどんなものかを知ることが大切と説明しました。もし、世の中の多くの人の中に自分も含まれていれば、それは素晴らしいことですが、そうでなくとも構いません。ただ、「多くの人が美しいと感じるもの」は何かを知っておくことが大切だと思っているのです。

 経営者がビジネスを通じてお客さまに提供しているものは、お客さまが喜ぶ商品やサービスです。世界の多くの人が美しいと感じるものであることを知り関心を持つことは、世の中の多くの人が求めるものはどういうものなのかということに関心を持ったビジネスを行うことにつながります。