――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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自社製品と競争するのは困難だ。
ワクチン接種が進んでいることで、ようやく航空会社がジェット機の購入を再開するのに必要な見通しが立ってきた。このことは米ボーイングにとっては特に安心できる材料だ。同社では昨年7月の時点で約100機の737MAXが買い手もつかず保管されていた。その後ユナイテッド航空やアラスカ航空など大手航空会社からの受注が相次ぎ、現在では残り10機程度となっている。
これは、航空機の経済学における「より効率的な新型機の買い手は常に存在する」という基本概念を裏付けるものだ。航空会社の営業費用の3分の1は燃料費であり、最新型ジェット機にかかるコストは、それによって得られる節約効果に比べれば小さい。
問題は価格だ。航空会社が急いでMAXを購入している様子からは、ボーイングが気前よく値引きをしていることがうかがえる。危機に直面しているときに割安な航空機をかき集めることで有名なアイルランドの格安航空会社(LCC)ライアンエアは、昨年12月に75機発注した。