“日本的プロ経営者”が陥る「V字回復の罠」、ビジョンなきサラリーマン経営の悲劇【高岡浩三が斬る!】日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏も、同社を「V字回復」させた「プロ経営者」として一時期もてはやされた Photo:picture alliance/gettyimages

日本には「プロ経営者」が不足しているとよく言われる。しかし、そもそもプロ経営者とは何かの答えを持つ者はほぼおらず、経営者の実力を裏付ける根拠もない。特集『高岡浩三の「企業の通信簿」』の本記事では、元ネスレ日本CEOの高岡浩三氏が、メディアにもてはやされるプロ経営者と「V字回復の罠」について辛口批評する。

日本の「プロ経営者」は本物なのか
赤字会社の「V字回復」は経営的には“易しい”

「プロ経営者」という言葉をジャーナリストはよく使います。だけど、その定義がいったい何なのか、誰も答えられないんじゃないですか?

 生成AIのChatGPTでプロ経営者について調べると、「オーナーではないサラリーマン経営者」なんて答えが出てきます。ですが、そんなものはただの役割の違いであって、実力を保証するものではありません。

 日本の社長の任期は多くの場合、たった3年から6年程度です。そんな短い期間で、その人が本当にプロの経営者かどうかなんて見極められるはずがないんですよ。

 また、メディアがプロ経営者をもてはやすとき、必ずセットで出てくるのが「V字回復」という言葉です。でもね、僕らのような経営者から見れば、ボロボロになった赤字会社を短期的にV字回復させること自体は、それほど難しくないのです。

 投資会社、例えば米ブラックストーンなんかがやるビジネスモデルもそうですが、ダメな会社を一度上場廃止にして、人を入れ替え、投資をしてやり直して再上場させる。これはリターンを得るための最も“易しい”やり方なんです。

 なぜならば、会社が底を打っている状態だから、ちょっと整理して数字を上向かせるのは、超難問ではありません。本当に難しいのは、その回復させた後の会社を、10年、15年と持続的に売り上げも利益も右肩上がりで成長させ続けること。これこそが至難の業なんです。

 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏だって、業績のV字回復で数年間は評価されたものの、10年は持ちませんでした。本来のガバナンスならば、コストカットという彼の役割が終わった時点で、次のステージにふさわしい経営者にバトンタッチすべきでした。

 でも日本は任期が短過ぎて、長期的な視点でのサクセッション(後継者育成)ができていません。結局、短期的な数字だけを追い掛ける「V字回復の連続」が、企業を疲弊させていくんです。