「自己肯定感の高い子」を育てる1つの方法Photo: Adobe Stock

シリコンバレーで最も有名な教師であり、グーグルはじめ一流企業の人事育成も担当しているというエスター・ウォジスキーの著書『TRICK──スティーブ・ジョブズを教えYouTube CEOを育てたシリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法』(文藝春秋)が話題だ。
教育者としても高い実績を誇るエスターだが、その子どもたちも、長女がYouTube CEOとなり、次女がカリフォルニア大学医学部教授、三女がバイオベンチャー創業CEOとなるなど、大きな活躍をしている。
今回、著書『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなっている加藤紀子氏が、『TRICK』の翻訳者、関美和氏に話を聞いた。シリコンバレーの「ゴッドマザー」、エスター・ウォジスキーの教育法、子育ての秘密とは?(構成:小川晶子)
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「自己肯定感」を伸ばす、ちょっとした方法

関美和氏(以下、関) 私は自分の子どもたちがもう成人しているので、「『TRICK』を20年前に訳したかった」と思いました。訳しながら、後悔することが多くて……。加藤さんは、「もう1回子育てをするとしたら、これはやってあげたい」と思うようなことはありましたか?

加藤紀子氏(以下、加藤) 子どもにお手伝いを積極的に頼むことです。エスターさんの長女で、いまではYouTubeのCEOのスーザンさんは1歳半からもうお手伝いをしていて、妹の様子を見て、泣いたらお母さんを呼んだり、オムツをたたんだりしていました。

「そんなに小さい子に、かわいそうじゃない?」って言う人もいるかもしれませんが、そんなことないんですよね。「助かるわ、ありがとう」って言われたら子どもも嬉しいし誇らしく感じ、自己肯定感や自己効力感が育っていきます。「役に立っている」と感じることって大事なんです。

 『子育てベスト100』にも、お手伝いの話がありましたね。

加藤 そうなんです。『子育てベスト100』では、「家族の『一戦力』にする」という項目として入れています。子どもを「お世話する対象」として見るというより、もっと対等に向き合って、家の仕事を分担してもらう。じつは小さな子でも力を発揮できるような「名もなき家事」って、けっこうあります。裏返しに脱いだ服をひっくり返すとか。

 いま、共働きで忙しい親御さんたちが多いですけど、忙しいからこそ、子どもにお手伝いを頼むよりも自分でやったほうが早いと感じてしまうんですよね。

 でも、子どもにとって、お手伝いをして感謝される経験ってとても大事なんだなと思いました。もっと子どもにやらせてあげたかったですし、みなさんにもおすすめしたいです。

「根拠のない自信」をつけてあげる

 内閣府の調査によると、日本の若者は諸外国と比べて自己肯定感が低く、将来にも悲観的です。「謙虚」という見方もできるかもしれませんが、自分が社会に何か貢献できるかもしれないとか、未来は明るいのではないかというポジティブな気持ちになれず、「自分は役に立っていない」と思っているとしたら、とてももったいないですよね。

 私は学生さんたちと接していて、もっとみんな自信を持っていいのにと思うことがよくあります。

『子育てベスト100』の最初のほうに「根拠のない自信をつける」という話があって、すごくいいなと思いました。とくに理由はなくても「うまくいく気がする」と思えることが、生きていくうえでとても重要だと思うんです。

加藤 ありがとうございます。エスターさんも、まさに実践されていましたよね。まず、子どもを信頼する。子どもは、信じてもらえているからこそ、自分を信じることができて、「根拠のない自信」につながります。

『子育てベスト100』の中では、児童精神科医の佐々木正美さんの言葉を紹介しました。「子どもは自分を信じてもらうことによって、信じてくれた人を信じます。そして、自分が信じられたことによって、自分を信じることができるのです」。『TRICK』の中でエスターさんがおっしゃっていることと共通しています。

 私たちは、子どもを褒めるにしても条件をつけてしまいがちじゃないですか。「これこれができたから、すごい」というように。無条件に信じる、信頼するって難しいですが、そう意識するだけでも違うかもしれません。