デイヴィッド・ボウイが予言した「モノが売れない時代」の新しい稼ぎ方Photo: Adobe Stock

不透明性が高まるいま、「人々を熱狂させる未来」を“先取り”し続けてきた音楽に目を向けることで、どんなヒントが得られるのだろうか? オバマ政権で経済ブレーンを務めた経済学者による『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』がついに刊行となった。自身も熱烈なロックファンだというの経済学の重鎮アラン・B・クルーガーが、音楽やアーティストの分析を通じて、ビジネスや人生を切り開くための道を探った一冊だ。バラク・オバマ元米国大統領も、この「ロックな経済学(ROCKONOMICS)」というコンセプトに強い関心を示しており、本書に熱い絶賛コメントを寄せているという。本記事では同書の一部を抜粋して紹介する。

ボウイ仮説──チケット価格はなぜ上がる?

 コンサートのチケットは1981年から2018年の間に平均で400%以上も値上がりした。これは〔アメリカの〕消費者物価全体の上昇が160%であるのを大きく上回る。

 そして最高のアーティストの最高の席はそれよりさらに値上がりしている。

 そんなことになったのは、ファイルの共有が進んでミュージシャンがアルバムを売って稼げる印税収入が大幅に減ったからだ。

 何年か厳しい年が続いた後、レコード業界は再編が進み、アーティストが録音した音源で得られる収入はいっそう減った。

 コンサートは今では大事な収益源になり、デジタル音源はコンサートを売り込む手段になった。

 ロックスターにして経済のパイオニアたるデイヴィッド・ボウイがこう言ったとき、彼はそんな展開を何年も前から予想していたのだ。

「音楽そのものは水道とか電気みたいになるよ……年がら年中ツアーして回る覚悟をしといたほうがいい。残ってる本当に独自なものなんて、もうそれ以外なくなってるし。そりゃもうとんでもなくエキサイティングだね」

 世界を動かす強力な力を目の当たりにした経済学者みたいな調子で、ボウイはこうも言っている。

「とは言うものの、エキサイティングだと思うかどうかは関係ないな。なんにしてもそうなるわけだからさ」

 ぼくが言うところのボウイ仮説は音楽の外の世界にも当てはまる。新聞や本、雑誌、その他の業界でもそうなるのだ。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙や『ニューヨーク・タイムズ』紙、ブルームバーグ、『エコノミスト』紙は、どこもライヴ・イベントの収入に頼っている。ニュースは数限りないオンライン・サイトで手に入る。

 おうおうにしてそういうのはタダだ。そのうち、新聞も雑誌も、生の番組や講義を売り込むための金食い虫に落ちぶれるかもしれない。

 そんな新しい経済の浅瀬を渡っていくのは簡単ではない。行動規範がお金に伴う活動を制限するから、というのが大きな理由だ。

 アーティストは、ファンを食い物にしているとかがめつすぎるとかと思われるわけにはいかない。

 そう思われたら聴き手との一体感が損なわれかねないし、音源の売り上げや印税収入、コンサート・チケットやグッズの売り上げにも影響が出るかもしれない。

 ファンもアーティストも人の子だから情熱や情緒で動く。人工知能とデジタル経済の今でも依然としてそうなのだ。

(本原稿は『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』(アラン・B・クルーガー著、望月衛訳)からの抜粋です)