“ロックな経済学者”が教える「儲け・人気」を最大化するポイントPhoto: Adobe Stock

オバマ政権で経済ブレーンを務めた経済学者による『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』(アラン・B・クルーガー著、望月衛訳)がついに刊行となった。自身も熱烈なロックファンだというの経済学の重鎮アラン・B・クルーガーが、音楽関連のデータ分析と関係者へのインタビューを通じて、経済的な成功や人生における幸福への道を解明した驚異的な一冊だ。
バラク・オバマ元大統領も、以前から「Rockonomics(ロッコノミクス=ロックな経済学)」というコンセプトに強い関心を示しており、「何十年も積み重なってきた経済の問題を解くカギがここにある!」と熱い絶賛コメントを寄せている。
ますます不透明性が高まるいま、「人々を熱狂させる未来」を“先取り”する存在であり続けてきた音楽に目を向けることで、どんなヒントが得られるのだろうか? 本記事では同書の一部を抜粋して紹介する。

コンサートチケット価格の決まり方には
経済学的な示唆が多く含まれている

 デジタル技術で音楽のビジネスモデルにも大きな変化があった。

 音楽業界以外にも、そうした変化は大きな意義を持つ。

 時代とともに進んできた技術、アンプにラジオ、塩ビのレコードに8トラック・テープ、カセットテープに音楽ビデオ、CDにMP3プレイヤー、そしてストリーミングで、アーティストはそれまでよりもたくさんの聴き手に音を届けられるようになった。

 グローバリゼイションや世界の結びつきの高まりで、もっとも人気あるアーティストの手が届く範囲は広がり名声は大きく高まった。

 ミュージシャンはもう、それぞれの街にある実店舗のレコード屋さんが自分のアルバムを在庫においてくれなくても大丈夫になった。

 彼らの音楽は世界中に、いつでもほとんどどこでも流せるようになった。

 でも同時に、技術の進歩には思わぬ副作用があった。

 録音された音楽を複製して配信するのにかかる費用は安くなり、不正な複製を取り締まるのは難しくなった。

 おかげでもっとも成功しているアーティストでも、印税は安くなり、それを受けて彼らはライヴ・パフォーマンスの値段を上げた

 ぼくが調べたのによると、1990年代以降コンサートの値段がこんなにも上がったのはそれが大元の理由だ。

 チケットは医療費と同じぐらいの速さで値上がりしている。

 コンサート・チケットの値段の決まり方がわかれば、他のイベントやサービス、製品の値段を理解し、最適な決め方をするにはどうすればいいか、学べる点がある。

 成功したバンドは、目先の売り上げを最大化することと、長い目で見た人気や儲けを最大化することの間のトレードオフを思い知っている。

 コンサート・チケットは究極の「パーティ・グッズ」であり、その値段には社会からの圧力が加わる。

 それを考えると、他の産業や市場での価格が説明しやすくなる。

 経済学者や企業は、経済学の伝家の宝刀、つまり供給と需要なんていう単純すぎる枠組みに頼りすぎているのだ

 かつて、アーティストにはコンサートやツアーを金食い虫扱いしている人がたくさんいた。

 人気をあおったり技を磨いたり、レコードの売り上げを後押ししたりするための活動だと位置づけていた。

 彼らの目標はレコードをたくさん売って、今度はもっと実入りのいい契約をレコード会社と結ぶことだった。

 コンサート・チケットの値段はわざと割安に、ファンが払う気になる値段の上限より下に抑えられていた。忠実なファン層を育て、アルバムの売り上げを伸ばすためだ。

 このあり方は今ではひっくり返ってしまった。コンサートのチケットは1981年から2018年の間に平均で400%以上も値上がりした。

 これは消費者物価全体の上昇が160%であるのを大きく上回る。そして最高のアーティストの最高の席はそれよりさらに値上がりしている。

(本原稿は『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』(アラン・B・クルーガー著、望月衛訳)からの抜粋です)