「ストリーミング」が経済にとって最高の実験室だと言えるワケPhoto: Adobe Stock

不透明性が高まるいま、「人々を熱狂させる未来」を“先取り”し続けてきた音楽に目を向けることで、どんなヒントが得られるのだろうか? オバマ政権で経済ブレーンを務めた経済学者による『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』がついに刊行となった。自身も熱烈なロックファンだというの経済学の重鎮アラン・B・クルーガーが、音楽やアーティストの分析を通じて、ビジネスや人生を切り開くための道を探った一冊だ。バラク・オバマ元米国大統領も、この「ロックな経済学(ROCKONOMICS)」に強い関心を示しており、本書に熱い絶賛コメントを寄せているという。本記事では同書の一部を抜粋して紹介する。

やっぱり世界は狭いとこ
──ストリーミング経済の仕組み

 音楽で2つ、確かなことがある。

 第一に、音楽のスタイルは変わり続け、どの世代も次の世代の音楽の好みをバカにする。

 そして第二に、ぼくらの音楽の聴き方は──塩ビのレコードからデジタル音源のダウンロード、ユーチューブにiPhoneと──変わり続ける。

 スポティファイやパンドラ、タイダル、ディーザー、それにQQといったストリーミング・サービスは、世界中の人たちが音楽を聴くときのやり方に現れた最新の技術革新だ。

 一方では、ストリーミングのおかげで、録音された音楽の売上高がここ10年で初めて増えた。

 何年も落ち込みが続いた後──録音された音楽の売上高は、世界全体で2002年の250億ドルから2015年の150億ドルへと減少した──業界のベテランたちも、先行きは明るいと感じる理由がやっとできた。

 2016年から2017年にかけて、ストリーミングのおかげで売り上げが増えたからだ。

 第8章で語るように、音源は何十億件、お客は何百万人もいるストリーミング・サービスは、経済の仕組みがどう働くかを観察できる恰好の実験場になった。

 たとえば2000万人のお客を抱えるパンドラがユニークな実験を行っている。

 スポンサーの広告アリでタダにしたサービスを提供し、お客の視聴に見られる習慣が、音楽を聴く間、毎時ごとに流れるコマーシャルの数にどれだけ敏感に反応するものか調べたのだ。

 その結果、需要曲線の形に関して経済学が得られるもっとも強力な証拠が得られた。

 広告が増える形で、邪魔というコストが増えれば増えるほど、視聴者は広告アリで無料のサービスを受け続ける可能性が低く、有料サービスに切り替える可能性が高くなることがわかった。

 こういうのは、企業が利益を最大化したりお客の体験をよりよくしたりするのに使える証拠の、教科書に載りそうなぐらい代表的な例だ。

 ストリーミング・サービスにはもう1つ、もっと広くに及ぶ効果がある。

 聴き手は、レコード店が店頭に並べている、どちらかというと限られた数のレコードとか、ラジオでかかる曲しか聴けない時代ではなくなった。

 昔、レコード店は限られた棚のスペースを、基本的には地元の音楽や人気が出てヒットした曲で埋めていた。

 今どきは、これまで創られてきた音楽が、指一本(アマゾン・アレクサなら口で言うだけ)で、世界中どこにいてもほとんどどれでも手に入る。

 第10章で見るように、この変化で世界中の人が聴く音楽も変わり始めている。

 自分の国のミュージシャンばかりではなくなってきているのだ。音楽に関しても、やっぱり世界は狭いところなのである。

(本原稿は『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』(アラン・B・クルーガー著、望月衛訳)からの抜粋です)