コロナ禍で観光・宿泊業界は大打撃を受けており、宿泊業者の倒産件数は高水準で推移している。そこで今回、宿泊事業者における「倒産の兆候」を整理してみた。事業者のみならず取引先や金融機関も参考にしてほしい。(帝国データバンク情報部 田中祐実)
インバウンド需要が消滅
コロナ倒産が相次ぐ宿泊業
最終的に「ホワイトナイト(白馬の騎士)」は1社も現れなかった――。2020年4月、カプセルホテルを運営するファーストキャビン(東京都千代田区)が破産した。負債額は約11億3000万円。インバウンド需要を見込んだスピード大量出店が、新型コロナウイルス感染拡大で裏目となり、客室稼働率が低迷した末路だった。水面下でスポンサーを募り、複数社が名乗りを挙げていたが、コロナ禍が進むにつれて交渉は軒並み頓挫。再建に向けてさまざまな支援を模索するも、力尽きた。
インバウンド需要の“消滅”によって、外国人観光客に人気だった京都市や東京都心部におけるゲストハウスやホステルは経営危機にひんしている。京都簡易宿所連盟によると、加盟する約8割の宿で稼働率が20%以下となり、廃業を検討する業者が増えているという。
帝国データバンクが調査した20年度(20年4月~21年3月)の宿泊業者の倒産件数(法的整理による倒産、負債1000万円以上)は、前年度比66.7%増の125件となり、2000年度以降の増加率で過去最高を記録した。負債総額は前年度比10.9%増となる863億6600万円に上った。
次に、負債額上位10社を見てみよう。トップは、関西や北海道で「ホテルWBF」ブランドを展開するWBFホテル&リゾーツ(大阪市北区)で、負債額は約160億円。次いで、関西屈指の設備を誇るリゾートホテル「ロイヤルオークホテルスパ&ガーデンズ」を運営したロイヤルオークリゾート(滋賀県大津市)が負債額約50億円、山口県萩市で「萩本陣」の名称で旅館を経営していたBJC(山口県萩市)が負債額約40億円と続いた。