バロン氏Photo:Sasha Maslov for The Wall Street Journal

 ジェラード・バロン氏が初めて深海底採掘に関わった際、同氏が出資する会社は投資家の資金5億ドル(現在のレートで554億円)を失った。その会社は南太平洋のある国と対立し、傷つきやすい海底の生息環境を壊し、最終的に経営破綻した。このほど再び深海底採掘に着手するにあたり、バロン氏はひと工夫を凝らした。新たなベンチャー「ザ・メタルズ・カンパニー(TMC)」をグリーンな事業と位置づけ、最近人気を集める環境志向の投資の潮流に乗ることにしたのだ。

 特別買収目的会社(SPAC)と合併し、7月に上場予定のTMCは5億7000万ドルの現金を手にする見込みだ。成功すれば、TMCの企業価値は29億ドルと、米国市場にこれまで売り上げがなく上場した鉱山会社の中で過去最高になるとみられている。

「われわれはかつて誤ってこれを大規模な深海底探鉱プロジェクトと位置づけた」とバロン氏は話す。採掘を目指す金属塊は電気自動車(EV)用電池を製造するのに不可欠だと同氏は言う。「実現に向けて投資家の支持を集めるのに適した方法ではなかった」