「高齢者に対し、積極的に周囲とコミュニケーションを取るべきだと口で言うのは簡単ですが、希薄になった人間関係を修復するのは、年を取れば取るほど難しい。そこで大事になってくるのは、各自治体が高齢者の生活状況をつぶさに把握し、孤立させないように包括的なケアをしていくことです。社会的なつながりは個人の努力で容易に作れるものではありませんから、公的な支援が必要なのです」

フレイルを予防しながら
衰弱と上手に付き合う

 身体的要素、精神・心理的要素、社会的要素という3つの領域にわたって表れるフレイルだが、「社会とのつながりを保つことが最も有効な対策だ」と鈴木氏は語る。

「社会とのつながりというと抽象的なので、他者とのつながりと言い換えてもいいでしょう。常日頃からコミュニケーションを取り合う友人や知人がいれば孤独に悩む機会が減り、引きこもり防止にもなります。また、日常的に人と話したり、メールのやり取りをすることは認知機能を正常に保つことにつながり、誰かに会いに出掛けるといったアクションが生じることで、体を動かす機会も増える。フレイルのリスクを下げるためには、他者との関わりを絶やさないことが大事なのです」

 対面での交流を図ることが難しいコロナ禍だからこそ、高齢者はオンラインツールを活用して社会とのつながりを保ち、適度な運動を続けることによって、心と体の働きを衰弱させないために配慮する必要がある。一方で、フレイルが高齢者にとって避けては通れない、普遍的な問題であることも忘れてはならない。

「フレイルの予防とは発症リスクの根絶ではなく、あくまで先送りが主眼。つまり年を取るにつれ、いずれは誰もがフレイルと向き合うことになるのです。とはいえ、決して予防を軽視してはいけません。例えば、75歳の時点でしっかり対策をしておけば、80歳や85歳になるまでフレイルと無縁の生活を送ることも十分可能になります。大切なのは、老いに伴う衰弱から目を逸らすのではなく、うまく付き合っていくことなのです」

 コロナ禍でクローズアップされるフレイル。一過性の問題では決してなく、今後日本が超高齢化を迎える上で、高齢者のみならずその周囲の人間も含めた国民全員が、根気強く向き合っていくべき課題なのかもしれない。