「U2が稼いだ54億円」と「ビヨンセが稼いだ62億円」はどこから来たか?Photo: Adobe Stock

人々を熱狂させる未来を“先取り”し続けてきた「音楽」に目を向けることで、どんなヒントが得られるのだろうか? オバマ政権で経済ブレーンを務めた経済学者による『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』がついに刊行となった。自身も熱烈なロックファンだという経済学の重鎮アラン・B・クルーガーが、音楽やアーティストの分析を通じて、ビジネスや人生を切り開くための道を探った一冊だ。同書の一部を抜粋して紹介する。

ミュージシャンは
何でどれくらい稼ぐのか?

 録音された音楽から得られるお金の大部分は、その音楽を創ったミュージシャンの懐には入らない。

 典型的なレコード契約はミュージシャンに、将来得られる印税の10%から12%を、費用を差し引いたうえで契約時に前払いする。

 そんな偏った分け方をするのには理由がある。

 ほとんどのレコードは儲からないのだ。

 レコード・レーベルが出すレコード10枚のうち、費用に見合う以上の売り上げにたどり着くのはほんの1枚か2枚だ。

 音楽のレーベルは大きなリスクを背負う。

 ヴェンチャー・キャピタルみたいなもので、たくさんの新しいアーティストや音楽に賭け、ほんのひと握りでも大ブレイクするのが出てくれないかと祈るのだ。

 費用を賄うべく、レコード会社は赤字、つまり損の出る音楽山ほどを、大当たりするひと握りのレコードで援助することになる。

 少なくとも、成功したスターとの契約を更新しないといけなくなるまではそうだ。

 今日、業界全体の音楽売上高の大部分を占めているスーパースターで、レコードを出しているアーティストたちですら、収入の大部分は印税よりもむしろライヴで稼いでいる。

 たとえば2017年、元祖ピアノマンのビリー・ジョエルはライヴで2740万ドル稼ぎ、一方、録音した曲やストリーミングではたったの130万ドル、出版印税では60万ドルしか稼いでいない。

 つまり、彼は所得の90%以上をライヴ・コンサートで稼いでいる。

 そして2000年代の初めに関しても、ジョエルはずっとそうだった。

 マディソン・スクエア・ガーデンで毎月コンサートを演るようになるずっと前の話だ(彼の身内では、この企画はときどきMSG4つ目のチームと呼ばれている。つまりニックス、リバティ、レンジャーズとこれ)。

 あるいはポール・マッカートニーでもいい。

 No.1になったヒット曲を音楽市場で一番たくさん書いた人だ。

 2017年、彼は収入の82%をライヴ・ショウで稼いでいる。

 U2は2017年にミュージシャンの中で最高の5400万ドルを稼いだ。

 そのうち96%はツアーで得ている。

 それからビヨンセは2016年に6200万ドルを稼いで一番になったが、この収入の88%はその年に回ったツアーで得ている。

(本原稿は『ROCKONOMICS 経済はロックに学べ!』(アラン・B・クルーガー著、望月衛訳)からの抜粋です)