自民党はきのう(2日)、世襲制限導入の見送りを決めた。世襲の新人候補の立候補制限は、次の次の総選挙に持ち越されることになった。
これにより、党内を二分していた論争に、一応の決着がついた格好だ。小泉純一郎元首相の次男・進次郎氏の公認も了承されることになるだろう。
自民党の党改革実行本部は明日にも、麻生首相に対して答申書を提出する方針だ。ただし、時期を明記していない以上、世襲問題が解決する可能性は小さい。
しょせん世襲議員を多く抱える自民党には、この問題を解決する意思も力もないのである。単なる選挙目当ての論争だといわれても仕方ないだろう。
これに対して、民主党はこの議論では一歩リードしている。すでに党の内規によって、3親等以内の親族の同一選挙区からの立候補禁止を決めた。さらに、政治資金規正法の改正案を提出し、親族同士の政治資金管理団体の非課税相続の禁止を目指している。
世襲がひ弱な政治家を
量産することこそ問題
筆者は昨年来、「週刊文春」誌上で世襲批判キャンペーンを行なってきた。その間、世襲の国会議員を主として、さまざまな反論や批判を受けた。ざっと列記しよう。
「憲法違反だ」、「優秀な世襲議員もいる」、「選挙の苦労はみな同じだ」、「有権者が決めたこと」、「選挙を否定するのか」、「地盤を受け継いでいないので、世襲とは呼ばないでくれ」、「政治家のDNAを引き継ぐのは、意味のあること」、「世襲議員が消えたら、タレント議員しか残らないんだぞ」――。
最後の反論は反論にもなっていないが、それはそれで面白い。それにしても、どれも社会の常識とズレた、問題の本質から外れた反論だ。世襲議員が、社会の現状を理解できていないというのも確かにうなづける。
世襲問題の本質は、この種の言い訳に見出すことは難しい。本コラムでも再三してきたが、不公平な世襲によって、ひ弱な政治家を作ること、これが世襲の最大の問題なのだ。