総合化学大手は2013年3月期の業績予想を軒並み下方修正した。欧州と中国の景気減退によって石油化学事業の苦戦が想定以上に長引くためだ。最大手の三菱ケミカルホールディングスは純利益を従来予想の500億円から210億円(前期比41%減)に修正するなど、各社とも悪化となった。

「業績回復の見通しが、なかなか立てられない」と嘆く化学大手首脳たちの頭にあるのは、国内余剰設備の再編である。

 国内のエチレン生産能力は現在、約750万トン、そのうち内需は500万トン程度。かねて需給に見合った設備の再構築が業界における最大の課題で、ますますその機運が高まっているのは、日本の石化事業が三重苦に見舞われているからだ。

 一つ目は中国の大幅な需要減で市況が悪化し、原価と販売価格の差が縮小していることだ。

 二つ目は中東や中国で設備の新設・増強が相次ぎ、国内品の国際競争力が一層低下していること。「余剰分を輸出して調整する手法はもう限界」(化学大手首脳)にあり、円高で廉価な汎用樹脂などの輸入が急増しているような状況だ。しかも三つ目の要因として16年ごろから北米でシェールガスをベースとした大型設備が立ち上がる。日本より最大5割も低いコストで生産できるとあって、世界の石化ビジネスの大きな転換点となる。

水島コンビナートではエチレン設備の集約に向けて準備が進んでいる
Photo:読売新聞/AFLO

 待ったなしの状況の中で再編の焦点となるのは水島地区(岡山県)と千葉地区のコンビナートだ。

 6月には鹿島地区(茨城県)で三菱がエチレン設備1基の廃止を決めた。同社はエチレンの国内生産能力を約3割減らす方針で、水島でも昨年、旭化成との統合運営を開始。まだ明言はしていないが、両社が1基ずつ持つエチレン設備の集約について水面下では具体的な準備が進んでいるもようだ。

 同様に三井化学と出光興産も一昨年から千葉地区で共同運営をしており、近く1基化への集約を進めるとささやかれている。目下の状況が、背中を押すことは間違いない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

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