大阪の中堅製薬会社、塩野義製薬がコロナ治療薬の治験を開始した。この「感染初期での飲み薬」という世界が渇望する治療薬において、競合する海外メガファーマ(巨大製薬会社)に対抗すべく、治験にある仕掛けを施した。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
塩野義がコロナ治療薬の治験開始
「感染初期段階での飲み薬」
感染症のリーディングカンパニーを自負する国内中堅製薬会社、塩野義製薬が新型コロナウイルス感染症治療薬「S-217622」の国内における臨床試験(治験)を開始した。3段階あるうちの1段階目、フェーズ1と呼ばれる試験だ。
コロナワクチンが先進国を中心に普及して一定の効果を見せている。だが、変異株の登場もあって効果は100%ではない。ワクチンを打たなかったり打てなかったりする人、そもそもワクチンが普及していない国もある。世界はコロナ前の日常を取り戻したとはいえない。
そこで渇望されているのが、コロナ感染の初期段階の無症状や軽症の時点で投与する飲み薬だ。例えば定期的な検査で早期に自身が感染していることに気付き、自宅で飲み薬を服用して治すことができれば、コロナ前の日常にかなり近づく。
日本の製薬会社はコロナワクチン開発ですっかり後れを取った。この「感染初期段階での飲み薬」でも、海外メガファーマ(巨大製薬会社)勢が先に開発を進めている。そこで開発のスタートラインに立った塩野義は遅れを挽回するために、この薬の国内治験で「ある仕掛け」を施していた。