ドル、人民元紙幣Photo:PIXTA

米中対立の激化で高まる
デカップリングの脅威

 米中対立が激化しており、米中経済の切り離し(デカップリング)の脅威が一段と高まっている。中国政府は、国家主導でデジタル分野を中心とした次世代産業の覇権を握ろうとしている。一方、米バイデン政権は、そんな中国に対し危機感を強めている。次世代産業の覇権は、そのまま軍事技術や安全保障面での覇権にも繋がるためだ。

 米国は、経済安全保障の名の下に、中国に対する取引を規制するだけでなく、先端技術の移転・漏洩を阻む動きを加速させている。また、日本などの米同盟国も巻き込み、サプライチェーンや貿易の面でのデカップリングも進めている。これに対し、中国も同様の報復措置をとる構えだ。

 デカップリングの脅威は、金融面でも高まる。中国企業の米国株式市場での上場を巡り、米中間のさや当ては激化している。中国は、国際基軸通貨の特権を独占してきた米国ドルへの挑戦として、デジタル通貨発行の動きを加速させている。

 こうした米中デカップリングは、今後どこまで進んでいくだろうか。米中両大国の覇権争いは止まらないという悲観論がある一方、デカップリングが自らにもたらす経済的不利益が歯止めになるという見方も根強い。