シラーPER40倍接近で米国株「次の10年」は低リターン?個人投資家が取るべき現実的なポートフォリオ戦略Photo:PIXTA

日米株式市場には堅調さが戻り、AI・半導体ブームを背景に投資家心理はなお強い。しかし、米国株の割高感を示すシラーPER(株価収益率)はITバブル期に迫る水準にある。過去データから見える長期リターン低下のリスクと、個人投資家が取るべき現実的なポートフォリオ戦略を考える。(龍谷大学経済学部名誉教授 竹中正治)

AI相場の熱狂は続くが
米国株の長期リターンには慎重な視点も

 日米とも、株価の堅調な動きが戻ってきた。

 米国トランプ政権の対イラン攻撃でホルムズ海峡危機がどう収束するかもいまだ不透明だが、反落も短期で乗り越え、AI・半導体ブームにわく株式投資家の楽観は簡単には壊れそうにない。

 過去10余年にわたる日米株価のリターンの高さは、歴史的に見ても突出している。しかしながら、次の10年同じ水準のリターンが期待できるとは思わない方がよさそうだと筆者は慎重に考えている。今回は米国株についてそう考える理由を説明しよう。

 行動経済学分野の研究実績でノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が1990年代に考案したCAPE比率(Cyclically Adjusted Price Earnings Ratio)、通称シラーPER(株価収益率)について直近では昨年12月の拙稿『忍び寄る「AIバブル崩壊」リスクと、個人投資家がとるべき長期投資の資産防衛戦略』で取り上げて解説した。

 ご存じない方のために、再度手短に説明しておこう。

 株価を1株当たりの利益で割り算した通常のPERは、それが高ければ株価が割高、低ければ割安と判断する基準である。これは個別株のみならず株価指数についても計算できる。

 しかし米国株価指数S&P500を対象にした通常のPERでは、それを計算する際に分母となる1株当たり利益の変動が激しく、株価の大局的な割高・割安を判断する基準として使えない。例えば厳しい不況時にはPERの分母になる1株当たりの利益の減少が著しく、株価が下落しても、PERは逆に上昇してしまうことがよくあるからだ。

 そこでシラー教授はS&P500を対象に「1株当たり利益」についてインフレ率を調整した上で過去10年の平均値を計算し、それを分母にしたPERを考案した。これがシラーPERである。

 次ページでは、シラーPERの水準と投資リターンの相関を検証しつつ、今後のポートフォリオのあり方を論じてみたい。