セルビア共和国の中央銀行総裁はこの夏、外国のある通貨に攻撃的姿勢を示している。著名な発明家ニコラ・テスラが、クロアチア共和国の新硬貨に描かれるのを阻止しようとしているのだ。没後78年になるテスラは、米電気自動車(EV)大手テスラの社名の由来にもなった電気技師のパイオニアだ。この人物を自慢する権利がどちらにあるかを巡り、バルカン半島で隣接する両国の間では今も熱い論戦が繰り広げられている。テスラは民族的にはセルビア人で、オーストリア帝国の一部だった現在のクロアチアで生まれ育った。1884年、28歳で米国に移住。そこで交流電流を用いた発電装置を考案し、世界中に電力事業を広めた。セルビアとクロアチアは長年、テスラのレガシー(遺産)を競い合うように建物や記念碑、通りなどにその名前をつけてきた。7月にクロアチア中銀が実施した国民投票で、2023年に予定される単一通貨ユーロ導入の際、同国の新硬貨に描かれる人物にテスラが決まった。それが実現すれば、ユーロ圏の3億4000万人がクロアチアの「テスラ硬貨」をポケットに入れる可能性があり、出身国としての立場を一層強く主張できる。
「テスラ」で深まる確執、ただしEVとは無関係
クロアチアはニコラ・テスラの肖像をユーロ硬貨に使う計画、セルビアは猛反発
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