米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は先週の待ち望まれた講演で、現在4%を超えているインフレ率がなぜ、近いうちにFRBの目標である2%に戻るのかを詳しく説明した。一方で、もしそうならなかったらどうなるかについては詳説しなかった。もうしそうならなければ、パウエル氏が――あるいは後継者が――考えるべき戦略は、単に目標を引き上げることである。より高いインフレ率がなぜ、良いことなのか。経済理論によれば、適度に高く安定したインフレであれば、不況に陥る回数が少なく、その程度も深刻ではないはずで、資産バブルを膨らませかねない中央銀行による債券購入など、エキゾチックな手段の必要性が低くなるからだ。実際面では、来年のインフレ率が2%ではなく3%に近づいた場合、目標値を引き上げれば、FRBがインフレ率を抑制するために利上げする必要はなくなり、その過程で雇用を破壊することもない。