コロナ禍で日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)が経営難に苦しんでいます。人件費の抑制にも取り組む中で、唯一、あまり影響を受けていないのが「パイロットの採用」です。本稿では、「将来を見据えたエアライン・パイロットの採用の裏側」を紹介していきます。(パイロット予備校代表 谷誠)
人件費の抑制は行う一方
パイロット採用は継続
日本航空(JAL)は9月10日、約3000億円の資金調達を発表しました。旅客機を思うように飛ばせない中、同社は資本を増やすことで、経営の安定化を図っています。また、同様にリスク管理の一環として、「人件費の抑制努力」も行っています。
具体的には、「社員の一時派遣」と「新卒採用の見送り」です。前者では、客室乗務員や地上職員を、物流会社や自治体などに一時的に出向させています。後者では2月、2022年度の新卒採用について、「一部の職種を除き」、実施を見送る発表を行いました。
ただ、ここで気になるのは、「一部の職種を除き」という部分です。実は、客室乗務員や地上職は採用中止となる一方で、パイロットは採用を継続しています。
実際にJALは、22年度の「自社養成パイロット」として、80人程度の採用活動を行っています。自社養成とは、大手エアラインが大学新卒者等を対象にパイロット訓練生として採用することです。
JALは破綻を経て、15年度入社からパイロットの自社養成を再開させています。当時は60人程度の採用でしたが、以降は少しずつ数を増やして80人程度となりました。そしてコロナ禍にあっても、22年度はその数を維持しています。
加えて、今後の自社養成パイロット志望者のために、オンラインをメインとしたインターンシップも開催しています。