不特定多数の乗客と接触せずに移動できることから、海外では「ビジネスジェット」(日本で認知されている呼び名は、いわゆる「プライベートジェット」)の需要が増えている。コロナ禍が収束しても、その需要は拡大し続けるとの報道もある。そこで今回は、日本におけるビジネスジェットの今後を展望する。(桜美林大学航空マネジメント学群教授 戸崎 肇)
ホンダのビジネスジェットが
海外で大成功を収めたワケ
日本ではあまり知られていないのが残念だが、日本が誇る自動車メーカー・ホンダのビジネスジェット(商品名「HondaJet」)が、海外で大成功している。2017年に北米市場で販売されると、瞬く間に5人乗りクラスの販売機数でトップの座を獲得した。同年に43機、18年に37機、19年に36機、そして20年に31機と、4年連続小型ジェットカテゴリーで世界1位を獲得している。
人気の秘密は、これまでにない発想と技術を取り入れて設計・開発されているところにある。業界の常識を覆し、翼の上にエンジンを設置することで機内空間を広くすることに成功した。また、扉を開いて外側に押し出すと、そのまま乗客が乗り降りするときの階段、つまりタラップになる。さらに、その階段となる扉の裏に飲み物のカップ置きを設けるなど、「空間を最大限利用する」という「日本的感性」が随所に生かされている。
それでいて価格は、1機およそ5億円と比較的安い。ビジネスジェットで最も普及しているのは8人から10人程度が乗るクラスで、1機20億円くらいだ。個人で買うとなると、それほど大人数で利用することもないだろうから、5人乗りで1けた違う価格は大いに魅力的だ。
海外で大成功を収めたホンダのビジネスジェットだが、日本では18年末に発売されて以降、あまり「売れている」とは聞かない。なぜだろうか。