2017年にドナルド・トランプ米大統領(当時)が環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱に踏み切ったことは、今振り返って見ると、同大統領が行った外交政策上、最悪な判断の一つだった。米国以外の11カ国は最終的に、環太平洋地域の貿易を自由化するこの協定に合意した。しかし、米国がこの枠組みから外れたことは、アジアで中国が覇権を握ることに対抗するトランプ氏の真剣な取り組みに水を差すことになった。このミスは、極めて重大だ。ここに来て中国政府が11カ国によるTPPへの加入を申請し、太平洋地域で米国を出し抜いている。中国の習近平国家主席が加入申請を発表したのは、米国が先週、米英豪3カ国による安全保障の戦略的枠組み「AUKUS(オーカス)」を発表した直後のことだった。AUKUSには原子力潜水艦の建造計画も含まれる。習氏の行動とそのタイミングは、太平洋地域の貿易協定が経済協定以上の意味を持つことを注意喚起させる。
【社説】AUKUSへの中国の対抗策
バイデン政権はTPPに加盟するのか
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