異例ずくめの利下げだった。

 FRB(米連邦準備制度理事会)は1月22日、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートを0.75%引き下げた。「FRBは1990年以降、1度に0.5%を上回る利下げに踏み切ったことはなかった」(上野泰也・みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)にもかかわらずである。

 ところが、その1週間余り後の30日のFOMCで、さらに0.5%の追加利下げを決定、即日実施された。2回にわたる計1.25%の利下げで、政策金利は2005年6月以来の低さとなった。

 世界同時株安に代表される金融市場の混乱、米国経済後退へのFRBの危機感の強さがにじみ出ている。無理もない。米国経済の減速に拍車がかかり始めていることを示す指標がめじろ押しだからだ。

続々と出るリセッションの徴候 1月2日に発表された、景況感を示す12月の製造業部門ISM指数。景気判断の分岐点である50を11ヵ月ぶりに下回り、企業部門の先行き懸念が高まった。(表1参照)

 ここに、個人消費の減退を予想させる材料が加わる。1月4日発表の、ニューヨーク株の下落を加速させる要因となった非農業部門の雇用者増加数は、11月の11万5000人から12月に一気に1万8000人にまで落ち込んだ。雇用の冷え込みは所得減を通じて消費を減退させる。

 クリスマス商戦の予想外の健闘から頼みの綱になっていた小売売上高もまた、1月15日に発表された12月分が前月比0.4%減と8ヵ月ぶりのマイナスに陥った。(表2参照)

 景気減速のそもそもの引き金である住宅市場の低落傾向にも当然、歯止めがかからない。12月の住宅着工件数は前年同月比4割弱減の100万6000戸。

(表3)に見るように2年近く低落傾向が続いている。