「カシオ四兄弟」三男のカリスマ社長が30年前に断じていた“世襲否定”の真意Photo:PIXTA

カシオ計算機の創業家である「カシオ四兄弟」三男の樫尾和雄氏は、30年近く社長を務め、数々のヒット商品を世に送り出してきた“カリスマ”だ。その和雄氏は社長の任にあった今から30年前にダイヤモンド編集部の取材に対し、世襲否定を明言していた。和雄氏の真意とは一体。当時のインタビューを再公開する。そして、カシオはその後どのような道をたどったのか。特集『セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏』と読み比べてみてほしい。(ダイヤモンド編集部)

※「週刊ダイヤモンド」1993年6月26日号の企業レポートを基に再編集。肩書や数値などの情報は雑誌掲載時のもの

カシオ三代目社長が語る
ヒット商品連発の極意

――今の景気をどう感じておられますか。

樫尾 バブルの時に比べればよくはないでしょうね。でも、あまり考えてもしようがないと思うんですね。われわれの場合、あくまでも商品次第ですから。景気がよくても商品が悪ければ業績は伸びませんし、景気が悪くても商品がよければ業績は伸びるわけですね。それがメーカーの宿命じゃないですか。今、景気が悪いといっても、ユーザーに買う気がないほどではなく、買いたい商品がない状態だと思います。

――それでいくと、カシオは今、どういう状態ですか。

樫尾 この上期は、世界的な不景気と円高を克服するのはちょっと難しいですね。下期には期待しています。われわれの場合、製品全体における新製品の寄与率が30%から35%近くあるんですが、下期に出る新製品がかなり寄与してくれるんではないかと思っているんです。新製品だと、円高分を克服できる価格設定ができますからね。

――社長が言う「いい商品」とはどういう商品ですか。

次ページ以降では、和雄氏ならではのヒット商品を連発した秘けつに加え、独自の人材育成術や組織論が明かされる。さらに、同族経営が続いてきたカシオの世襲のあり方についても踏み込んでいる。30年前のカリスマ経営者の金言と、特集『セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏』でカシオ創業家の歩みを比較しながら読み進めてみてほしい。