昨今、時計業界を取り巻く環境は激変しており、大手3社は変革に迫られている。“御三家”の一角、セイコーは、服部真二代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)が社長を務めていた頃から、生まれ変わろうとしていた。服部氏は、義父で“最高権力者”だった禮次郎氏を追放した直後の2010年にダイヤモンド編集部のインタビューに応じている。当時、社長だった服部氏が変革を宣言したようにセイコーは「変わった」のか。当時のインタビューと、特集『セイコー、シチズン、カシオ 時計“御三家”の黄昏』を読み比べてみてほしい。(ダイヤモンド編集部)
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――新体制になり、中期経営計画を発表した。訴えたい点は。
ガバナンスと内部統制の再構築だ。ここをしっかりと行うことで、業績は後からついてくるだろう。
社長解任は苦渋の決断だった。このままの体制では、金融機関の支援が得られず、会社は持たなくなるという危機的状況だった。労働組合が立ち上がったのは大きかった。パワハラのうわさは聞いていたが、調査報告書を見て確信した。誰かが仕掛けたのではなく、自浄効果が働いたということだ。
それまでも、礼次郎氏に苦言を呈してきたことはあったが、結果的に時間がかかってしまった。申し訳ない。トップダウンですべてが決まり、ものを申せないという雰囲気だった。経営企画部も、役員全員が議論する場もなかった。
そのため、新体制では、社外取締役に民事専門の大内俊身氏に入ってもらう。刑事専門の原田明夫氏と2人で司法に強い体制になる。担当部長も入れ、全員参加型で経営を進めていく経営戦略会議を立ち上げた。議題によっては、キャリアのある外部の人も招く。事業会社の社長と話す場もつくった。
「出る杭は打たれる」のではなく、「出る杭を称える」。そういった企業に変えていきたい。