昨今数々の関連書籍が刊行され、関心が高まっているマルクスの『資本論』。コロナ禍で先行きが見えず、広がる格差やこれからの働き方への不安を抱える人が増えていますが、『資本論』にはそういった問題を深く考えるためのヒントがたくさん書かれています。そこで、経済学博士・的場昭弘さん監修の著書『図解 明日を生きるための「資本論」』(青春出版社)掲載の池上彰さんとの白熱対談「『資本論』が教えてくれる これからの働き方」から2回に分けて抜粋紹介します。
日本の資本主義社会は、これからどうなっていくのか?
的場:日本の資本主義が揺らいできているのは確かですが、だからといって、これから資本主義はどこに向かうのか。その命題に答えを出すのはひじょうにむずかしいことです。
ただ、日本がある意味、資本主義の先駆者であるということはいえると思います。GDPは停滞しているし、経済発展も滞っていて、何もかもダメな現在の日本がどうして先駆者なのかというと、実はそのダメな部分にこそ資本主義の未来が見えるからです。
つまり経済成長がゼロになり、社会が停滞するという、あたかも資本主義の行きつく先に直面した最初の国が日本なのです。日本の資本主義は停滞しているがゆえに、先駆となり、世界の未来を指し示しているといえます。その一つがバブルの崩壊です。日本のバブルの崩壊をしっかり分析していれば、その後の世界的バブルの崩壊は防げていたかもしれません。