“笑いの神を降臨させる男”
神職でもある氏ならではのワザか

 氏のゲーム実況で、界隈では伝説の名言となっている「勝手に斧(おの)振らないで」、というものがある。氏の人気に火をつけたともいえる、名シーンだろう。
 
 ゲームプレー中、コントローラーの不具合からか、氏のキャラがハンマーを何度も空振りし、その度に氏は「勝手に斧振らないで」を連呼した。その様子がたいそう面白く、本人は視聴者から「斧じゃなくてハンマー」などとディスられて落ち込んだそうだが、Twitterでは「狩野英孝 斧」がトレンドワードになるほど話題になった。
 
 そしてこれをきっかけに、それまで鳴かず飛ばずだった氏のYouTubeチャンネルは、登録者数が10万人を突破することになったのである。氏のチャンネルが迎えた最初のブレークスルーだ。
 
 氏の配信をよく見る人に話を聞くと、「『なぜあそこまで次々と笑いの神が降りる瞬間が訪れるのか』と思わされる」と話している。いわゆる珍プレーの類が、あまりうまくない氏だからこそ頻出するようである。
 
 これは、いわゆる運を“持ってる”とも言えようが、そうした珍プレーをきっちり笑いに変えられるのは、まぎれもなく氏が培ってきた芸人としてのスキルがあってこそであろう。余談だが、氏は神職にも就いているので、配信時に頻繁に“神を降ろす”ことができるのは、あるいはそのおかげなのかもしれない。
 
 また、「うまくないからこそ応援したい」という思う視聴者も多いようである。うまくなくても懸命に、あるいは楽しそうにプレーする氏の姿勢が好感を呼んでいて、だからこそ、氏が難所をクリアしたときなどのカタルシスが高くなり、プレーヤーとリスナーはそれを共有する。これはおそらく、「ぜひもう一度味わいたい」と思わされるネット体験であり、リスナーはきっちりチャンネル登録をして、再度訪れるのである。