横浜市の旧大口病院(現横浜はじめ病院、休診中)で2016年、入院患者3人の点滴に消毒液を注入して殺害したとして、殺人罪などに問われた元看護師・久保木愛弓被告(34)の判決が9日、横浜地裁で言い渡される。10月22日の公判で検察側は死刑を求刑し、弁護側は心神耗弱状態だったとして無期懲役が相当と主張。久保木被告は「死んで償いたい」と述べた。家令和典裁判長は「どのような結果になろうと主文の言い渡しは最後にします」と異例の通告をしており、極めて厳しい刑が予想される。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

「間違いありません」と
全面的に認める

写真:旧大口病院入院患者が連続死した旧大口病院。横浜はじめ病院に改称した Photo:JIJI

 久保木被告の起訴内容は16年9月15日~19日ごろ、興津朝江さん(当時78)と西川惣蔵さん(同88)、八巻信雄さん(同88)の点滴バッグに消毒液「ヂアミトール」を注入し、同16日~20日に殺害したとされる。

 神奈川県警は18年7月7日、西川さんに対する殺人容疑で、同28日に八巻さん、8月18日に興津さんに対する同容疑で再逮捕していた。横浜地検は3カ月の鑑定留置の結果、完全責任能力があると判断し、12月7日に3つの事件を一括で起訴した。

 久保木被告は逮捕後「20人前後に消毒液を注入した」「約10人を殺害した」と供述したとされるが、いずれも物的証拠などがないため立件されていない。神奈川県警はもう1人の男性(当時89)に対する殺人容疑で追送検していたが、こちらも不起訴となった。

 初公判が開かれたのは今年10月1日。長く伸びた髪を背中で結び、細い縁の眼鏡と白いマスクを着用。白いブラウスとグレーのジャケットとスカート姿で、やや緊張したような表情で出廷した。

 検察側の起訴状朗読に続き、罪状認否で家令裁判長から「何か違うところはありますか」と問い掛けられ「すべて間違いありません」と小さい声ながら、はっきりとした口調で認めた。弁護側も事実自体は争わず、統合失調症による心神耗弱状態にあったとし、責任能力について争う姿勢を示した。