スマートフォンの急速な普及を背景に、利用者の位置情報を活用したサービスに注目が集まっている。SNS(ソーシャルネットワークサービス)を通じて位置情報を共有する、いわゆる「チェックイン」をするユーザーが増え、そうした行動に連携して小売業やサービス業がクーポンやポイントなどを発行し、会員獲得サービスに使うケースも増えている。
そうしたサービスの一つ「スマポ」は、首都圏にある約200店舗で、専用アプリのユーザーが参加店舗へ来店した際にポイントを付与するサービスを展開している。こうしたサービスは珍しいものではないが、多くの場合、来店したことを確認するチェックインにはユーザーがアプリを操作するという自発的な行為が必要とされる。スマポの場合、店内のチェックインポイントで人には聞こえない帯域の音波を発信しており、その音波をスマホのマイクが感知することで自動的に来店を確認できる仕組みとなっている。しかも、この仕組みでは、特定の売り場や陳列棚などきめ細かくポイントを指定することができ、ショッピングモール内など屋内のGPSによる位置捕捉が使いにくい場所などで位置情報連携サービスが使える。
位置情報ビジネスに詳しい野村総合研究所の亀津敦氏は「位置情報に連動してクーポンやポイントを使って実店舗へ誘導するO2Oサービスに加え、今後、測位技術の進化により、店内での情報提供の精緻化や購買体験を向上させるような『インストア・ナビゲーション』サービスが注目される」としている。
O2Oでは、近くにいるユーザー(消費者)に、店舗の存在を認知させ、来店を促すまでだが、実際に購買が行われる店舗内で、買おうとしている商品のある場所まで誘導するといった高度な「おもてなし」にも位置情報が使われるようになる。購買の意思決定が行われるギリギリの場面で背中を押すような老練なカリスマ店員のノウハウが自動化・仕組み化されるかもしれない。
たとえば米Aisle411はホームセンターなどの大型の店舗と契約し、その店舗の実際の棚割りや在庫のデータを取得し、消費者が在庫・商品の所在をスマホで確認できるサービスを展開している。購入したいもののリストを作成すれば、店舗内での買い回りのルートも提示する。
また、小規模店舗向け少額決済ソリューションを提供する米Squareは、店舗にチェックインしたユーザーが、あたかもその店のなじみ客のように、店で支払いをせずとも顔パスでショッピングができるようにするモバイルペイメントアプリ「Square Wallet」を展開している(アプリを通じて、顧客の来店が店舗に通知され、顧客は名前を告げるだけで、決済が完了するようになっている)。
日本では2014年に、従来のGPSよりも高い精度(誤差が数メートル以内とされる)での測位を可能とする準天頂衛星「みちびき」の本格運用が予定されている。「みちびき」の測位データを屋内でシミュレートして活用できるようにするIMES(Indoor Message Service)システムも開発中だ。もともと地図好きな国民性なだけに、今後グローバルでも先進的なサービスが次々と出てくることが期待される。
(ダイヤモンド・オンライン IT&ビジネス)