他人と物理的・心理的な距離が広がり、「1億総孤独」といえる現代。他者に依存せず、「個」として自立するには、どうすればいいのでしょうか。寺田倉庫の経営改革などを果たし、「伝説の経営者」と呼ばれる中野善壽氏は、「孤独を生きることで、自分の感性を信じ、磨き抜くことができる」と語ります。本連載では、中野氏の著書『孤独からはじめよう』から抜粋し、「一人で生きる時代の道標」となる考え方を紹介します。

仕事をする相手には、「何点」を求めるべきなのか?Photo: Adobe Stock

自分にも相手にも、100点は求めない

孤独を目指す生き方は、自分が完璧でなければいけないという意味ではありません。
足りないままでいい。
欠けていたっていい。
100点満点のパーフェクトに整える必要はなくて、スカスカの65点で十分だと思います。

そして、相手にも百点を求めない。
お互いに65点くらいでいい。
平均よりもちょっといいくらいの強みを持ち寄って、違う個性を組み合わせてから、一緒に役割分担をして一つのことを成し遂げられたらいい。

これからは、そんな物事の成し遂げ方が主流になるはず。
なぜなら、そのほうがずっと効率的で、効果的だからです。

例えば、「同じ部門の売り上げは、毎年同じやり方を踏襲し、工夫を積み上げながら10パーセントずつ高めれば十年後も安泰」なんてあぐらをかけたのはとうの昔。
今は、「これさえ目指せばいい」という正解がない時代です。
たった一つの目標に全力で向かったところで、環境がちょっと変われば、前提は崩れます。
つまり、完璧に準備することが割に合わない時代になったと思うのです。

それに何より、僕は「完成させる」のが好きじゃない。
嫌いというより、居心地が悪い。

不完全なまま、感じるままに、形を自由に変えていく。
しなやかさこそが、強さなのだと、僕は信じているのです。