他人と物理的・心理的な距離が広がり、「1億総孤独」といえる現代。他者に依存せず、「個」として自立するには、どうすればいいのでしょうか。寺田倉庫の経営改革などを果たし、NHK「SWITCHインタビュー達人達」でコシノジュンコ氏と対談、著書『ぜんぶ、すてれば』は4万部を超えるベストセラーとなった「伝説の経営者」、中野善壽氏は、「孤独を生きることで、自分の感性を信じ、磨き抜くことができる」と語ります。中野氏は孤児同然の幼少期を過ごし、孤独のなかを生きてきました。しかし、そこで自分の感性を磨き、「個」として自立していきます。そして社会に出てからは「孤独を武器」として、伊勢丹・鈴屋での新規事業展開や、台湾企業の経営者として、大胆な手腕と比類なき視座の高さをもち、数々の実績をあげてきたのです。本連載では、11月17日(水)に発売される中野氏の新刊『孤独からはじめよう』に掲載されている「他人に依存せず、自立して、素の自分をさらけ出して生きる」51の人生哲学から抜粋。「一人で生きるのが当たり前の時代」でも、肩肘を貼らず、自分に期待して、颯爽と人生を楽しむ「希望の道標(みちしるべ)」となる考え方を紹介します。
1日「2時間」は静寂の中で過ごす
孤独の力を磨くには、それなりの努力を要します。
僕にとって欠かせないのは、一人になって自分を見つめる時間。
1日最低2時間は、誰にも邪魔されず、静寂の中で、内面に浸れる時を過ごします。
2時間というと、長いと驚かれることも多いのですが、考えてみてください。
1日24時間の中の、ほんの一割にも満たない長さです。
それくらいは、贅沢ではないように思います。
自分の人生の中の、自分のための時間なのですから。
現代人はあまりにも、自分の心を疎かにしている気がしてなりません。
通信や移動の手段がこれだけ発達し、話したいと思う相手とは瞬時につながることができ、コミュニケーションのコストは劇的に下がりました。
移動のためにかけていた時間は年々削減されて、リモートワークも広がって、仕事もどんどん効率化されています。
それで生まれたゆとりを、果たして何に使っているのか?
日常を振り返ってみて、どうでしょうか。
きっと無意識に消費している時間が多いはずです。
何に向けて消費しているかというと、おそらくは「自分の内面以外の何か」です。
ネットニュースをだらだらと見続けたり。
飛んでくるメールやチャットに対応するのに追われたり。
顔も知らない誰かのつぶやきの羅列を、飽きることなく眺めたり。
人間は寂しがりの動物だから、人といつでもつながるための道具や技術を発明し続け、発展させてきました。
結果、できあがったのは、あまりにも騒然とした世の中です。
僕たちは常に他人の声に囲まれ、他人の声に振り向かされ、他人の声に応えようとして忙しい。