さらに2011~2012年には、アメリカとEU(欧州連合)がイラン産原油の全面的輸入禁止措置をとる。これに対してイランがペルシア湾沿岸諸国で産出する原油の搬出路であるホルムズ海峡の封鎖を宣言すると、アメリカは「封鎖されたら軍事行動に打って出る」と返し、危機感が一気に高まった。

核合意による関係改善も
アメリカの離脱で一気に悪化

 2015年、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、ドイツの6ヵ国は、イランとの関係改善に向けて動き出す。いわゆる「イラン核合意」である。これにより、イランの核開発を大幅に制限する代わりに、経済制裁を解除することにしたのだ。ところが、アメリカの大統領がバラク・オバマからドナルド・トランプに替わると、イランとの間に一触即発の危機が生じる。

 2018年、アメリカは核合意からの一方的な離脱を発表した。IAEA(国際原子力機関)はイランが合意事項を守っていることを確認したのだが、アメリカは離脱を強行し、イランと再び対立する道を選んだのである。さらに2019年4月には、イラン政府の軍事組織であるイラン革命防衛隊をテロ組織と指定したうえ、イラン産原油禁輸免除を完全撤廃した。

 その後もアメリカの強硬姿勢は続く。2019年9月、サウジアラビアの石油施設が何者かに攻撃されると、アメリカはイランによるものと主張し、制裁措置としてイラン中央銀行との取引を停止。翌年1月には、アメリカ空軍がイラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官を空爆して殺害した。

アメリカが殊更に恐れる
イランの地域覇権主義

 なぜ、アメリカはこれほどイランを敵視し、警戒するのだろうか?

 そもそも現在のイラン・イスラム共和国(イスラム教シーア派)は、1979年に親米のパーレビ王朝をイスラム革命で打倒して誕生した。最高位のイスラム法学者が全権を掌握する神権国家で、イスラム革命の輸出、イスラエルの殲滅、そして“大悪魔”アメリカとの戦いを国是としている。