中国経済の驚異的な発展を受けて、懸命に働けば誰でも成功できるという考えが同国内で芽生えた。それは習近平国家主席の「中国の夢」の柱の1つだ。
しかし、中国人の多くにとって、そうした成功はもはや実現可能な夢ではない。
学術研究やデータから判断すると、中国経済が成熟するにつれて、富裕で政治的コネのあるエリート層が最良の機会を得る傾向が強まっている。貧しい家庭や地方の家庭の子供たちは、成功するのが一層難しくなったと感じている。
シンガポール国立大学と香港中文大学の学者がまとめた影響力の大きい論文によると、中国社会の底辺に位置する家庭で1980年代に生まれた子どもが成長過程で成功の階段を上っていける可能性は、1970年代生まれの子どもよりも低くなっているという。この論文の著者らは、こうした傾向を「世代ごとに深刻化する貧困のわな」と呼んでいる。
世界銀行のエコノミストたちは、中国社会の階層間移動の低下が特に女性の間や貧しい地域で起きていることを要因に挙げ、同様の結論を導き出している。
こうした問題は、急速な工業化・富裕化で何百万人もの人々を貧困から救い出した中国の成功度合いを示すものでもある。世界2位の経済大国となった中国では、成熟した欧米諸国で見られる問題の一部が表面化し始めている。それは特に低所得層で、所得が伸び悩むという現象だ。しかし、中国と欧米諸国で異なる点が一つある。それは、中国の場合、こうした状況が発展過程のより早い段階で起きていることだ。