コロナショックで賃貸住宅市況は急変した。都区部の稼働率は急減し、それまで行ってきた家賃の値上げができなくなった。しかし、感染状況が落ち着いて通勤者は戻りつつあり、外国人の入国も再開された。今後、賃貸住宅市況にはどのような変化が起こるのであろうか。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
コロナショックで
賃貸住宅市況が急変
緊急事態宣言は県をまたぐ移動を制限した。この意味は2つある。一つは、県をまたぐ転居をしなくなることと、もう一つは県をまたぐ通勤をしなくなることだ。転居は感染者数の多い地域が敬遠されることになる。端的に言って、東京23区だけが激減したといっていい。毎年上げてきた都区部の稼働率は急減し、それまで行ってきた家賃の値上げができない状態までになった。
一方、通勤の代わりに行われたリモートワークは隆盛となり、自宅においてリモートワークをする場所を確保するニーズが増えた。これは「もう1部屋需要」といわれ、4LDKが主体の分譲戸建ての売れ行きをよくし、単身者もワンルームから1DK・1LDKへの移転が相次いだ。東京都の今年10月のテレワーク実施率調査結果(従業員30人以上)は、緊急事態宣言中である9月の63.9%から55.4%に急減した。10月は一貫して新規感染者数が減ったので、11月はさらに減る可能性が高くなっている。
新規感染者数減少で
今後何か起こるか
新型コロナの新規感染者数が急減したことで、緊急事態宣言は9月末で全面解除され、その他の行動制限も緩和されてきている。人流が増大する中、経団連は「科学的知見」として人流と新規感染者数との関係はなく、一律のリモートワーク7割順守要請の解除を提言するに至っている。これは感染症の専門家の見解を「非科学的」と揶揄(やゆ)し、経済や雇用といった専門以外のことはコロナの専門家は疎いと暗に指摘しているように感じられる。
実際、新型コロナに関しては毎日詳細なデータが公開されているので、因果関係や要因分解や数字の深刻度を分析することは比較的簡単にできる。私自身その分析を行っており、その結果を別のコラムで公表しているが、その概要は、ワクチンを2回打った人は感染する確率が10分の1以下になることが分かっており、重症化しにくいことが統計解析により明らかであるというものだ。
そうなると、現在の感染者数の少なさに加え、新規感染者数が増えるスピードはこれまでよりもはるかに遅く、重症化もしにくい。重症者の死亡率は62.5%から88%と推計されるので、重症者数が増えない事態は死者がほぼ出ないことを意味する。ワクチン接種済み率が7割を超えており、既に感染爆発におびえる状況ではなくなっているというのが私の主張だ。