スマートホームや防音の部屋など、一見ニッチと思われる住宅には、実はしっかりとしたニーズがある。うまくマッチングする方法さえあれば、新型コロナウイルスの感染拡大で不振の賃貸住宅市場でも、差別化の効用を見いだすことができるのだ。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
住宅は「出来合い」の商品がほとんど
不動産の集客ルートは数少ない。物件検索サイト、不動産屋の持ち客、現地広告の3つで大半を占める。それ以外の媒体は、引っ越し希望の方の確率は1万分の1の0.01%以下しかないので、広告費用倒れしてしまう。
こうなると、不動産は商品としての特徴を失っていく。立地・面積・間取り・価格で物件の検討範囲が絞られ、それ以外の要素は優先順位がかなり落ち、絶対条件にはならなくなる。でも、これに風穴を開けることができれば、不動産は多様な商品企画であふれるようになるかもしれない。そんな取り組みを始めた。
住宅は、オーダーメードとレディメードに分けられる。オーダーメードは注文戸建てがあるが、これしかないと言っても過言ではない。その他、新築分譲戸建ても新築分譲マンションも賃貸住宅も、すべて顧客ニーズを聞かずに建てられてから、顧客を探すパターンとなる。
聞かないといっても、入居者が決まらないと困るので、入居者ニーズの最大公約数的な商品企画になっていく。それは横並び意識が強いために、差別化はほとんどなく、画一的になりがちだ。分譲マンションなら、70平方メートルの3LDKが7割を占める市場が出来上がる。その間取りプランも、大きく違うものを作り出すことはできない。