それから20年、アフガニスタン政府は戦後も駐留し続けたアメリカ軍やNATO(北大西洋条約機構)軍の力を後ろ盾に統治を継続していたが、2021年にアメリカ軍の撤退がはじまると、タリバンが大攻勢をかけてきて、瞬く間にカブールを制圧、実権を掌握してしまった。この電撃的な侵攻は、アフガニスタンを大混乱に陥し入れ、世界中を驚かせた。

過激なイスラム原理主義で
国民の支持を失ったタリバン

 そもそもタリバンとは、イスラム教スンニ派の過激派で、旧ソ連の軍事介入によって引き起こされたアフガニスタン紛争後の内乱のなかから生まれた。

 1990年代前半、アフガニスタンで反共産主義ゲリラ同士が激しい武力衝突を続けるなか、アフガニスタンとパキスタンの国境付近にあったイスラム神学校の学生たちが中心となってタリバンを結成し、1994年に活動を開始した。タリバンとは、アッラー(神)の道を求める者たち、つまり神学生または求道者を意味する。

 タリバンは各地の軍閥を制圧していき、1996年には首都カブールを占領。イスラム国家の成立を宣言した。当時のタリバンは、長い内乱を終わらせ、平和をもたらしてくれた存在として、アフガニスタン国民から熱烈な支持を受けていた。しかし、タリバンの統治は娯楽や文化を禁止したり、女性の労働や外出を認めなかったり、逆らえば容赦なく処刑するなど、あまりに厳しかったため、次第に支持を失っていったのである。

 なお、タリバンがオサマ・ビン・ラディンを匿っていたのは事実だが、それは「助けを求められたら最後まで保護する」というアフガニスタンの慣習に従ったものとされている。結局、そのことが仇となり、多国籍軍の攻撃にさらされ、政権の座を追われることになったのだが。