世界は対立や紛争にあふれている。米中の覇権争い、イラン核問題、アフガニスタン、イスラム過激派テロ、台湾の緊張や北朝鮮核ミサイルなど、キナ臭さは高まる一方だ。この緊迫した世界情勢を解説した新刊書『世界の紛争地図 すごい読み方』からの一部抜粋で、世界各地の対立と紛争の背景をわかりやすくコンパクトに伝えていく。今回は、長く紛争が続き、いまだ和平への道は遠い、パレスチナ問題について解説する。
解決のきざしがみえないまま
70年以上も戦いが継続
世界一有名な紛争といえば、パレスチナ問題を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。民族的・宗教的に異なるユダヤ人とアラブ人(パレスチナ人)がパレスチナの地をめぐって争っている紛争だ。「世界で最も解決が難しい紛争」ともいわれ、開戦から70年以上すぎたいまも解決のきざしがみえてこない。
2021年5月にはイスラエル軍とパレスチナの武装勢力ハマスが激しい武力衝突を繰り広げた。11日間で停戦したものの、ロケット弾や空爆の応酬により、269人が犠牲になった。
パレスチナ問題の発端は2000年以上前に遡る。当時、パレスチナの地にはユダヤ人国家があり、ユダヤ人とアラブ人が共存していた。しかし、ユダヤ人国家はローマ帝国によって滅ぼされ、多くのユダヤ人が流浪の民となってしまう。
その後、ユダヤ人はヨーロッパなどに渡り、差別や迫害を受けながらもコミュニティをつくって暮らしていた。一方、パレスチナの地ではイスラム教徒となったアラブ人が暮らし続けていた。
そうしたなか、ユダヤ人に国家建設のチャンスが訪れる。時は20世紀、第一次世界大戦中のことだ。