2002年、カルザイ氏が大統領に就任し、アフガニスタン政府は新たなスタートをきった。しかし、国内情勢はなかなか安定しない。その要因のひとつは、タリバンによるテロだった。アフガニスタン戦争後、タリバンはパシュトゥーン地域と呼ばれる国境地帯に逃げ込み、同国への影響力拡大を狙うパキスタンの支援を受けつつ、アフガニスタン政府やアメリカ軍を攻撃し続けたのである。

 国境地帯は部族の力が強く、中央政府の統治が行き届かない。しかも、麻薬の原料となるケシの密売で得た資金を武器の購入にあてられるため、タリバンにとって絶好の“隠れ家”となっていた。

 ゲリラ化したタリバンは、アフガニスタンやパキスタンでテロ攻撃を実施。2012年には女性の教育権拡大を訴える女子生徒マララ・ユサフザイ氏が、タリバンから派生したパキスタンのタリバン運動(TTP)に銃撃されて重傷を負っている。

タリバン政権下のアフガンが
テロ過激派の温床となる恐れも

 2014年にアシュラフ・ガニ氏が大統領に就任してからも、アフガニスタンの治安状況は改善せず、民主化も一向に進まない。タリバンのテロのほか、政府官僚の腐敗や無能ぶりが深刻で、将来の見通しも立たない。

 そうしたなか、アメリカのドナルド・トランプ大統領(当時)は2019年11月にアフガニスタンのアメリカ軍基地を訪問し、タリバンと交渉を行った。そして2020年2月に和平合意に至ると、アメリカ軍の撤退路線を定めたのである。

 ところが、この判断が大きな混乱を招くことになる。

 2021年4月、トランプ政権を引き継いだジョー・バイデン政権が「9月11日までにアメリカ軍をアフガニスタンから完全撤退させる」と表明すると、前述のようにタリバンが一気に勢力を拡大。8月には首都カブールを含む国内全土を制圧してしまったのである。

 こうしてタリバンは20年ぶりにアフガニスタンの実権を取り戻した。報道官は恐怖政治の復活を否定しているが、国民の多くはおびえており、国際社会はアフガニスタンがテロ活動を行う過激派の温床となることを危惧している。アメリカが見捨てたことにより、アフガニスタンは再び混乱に陥ってしまった。