連載第14回は、「底辺業界」とも囁かれるビルメンテンスの現場で働く、ベテランワーカーを紹介しよう。現在は求職中の身だが、かつては懸命に働く「安月給の戦士」だった。彼がこの業界に愛想を尽かした理由とは……?

 あなたは、生き残ることができるか?


今回のシュリンク業界――ビルメンテナンス

 清掃や、電気・空調・給排水などの設備管理、建物設備の保全業務、警備業務などを総称して「ビルメンテナンス」と呼ぶ。日本ビルメンテナンス協会調査によると、業界規模は2010年度で約3.5兆円。ピークの2008年と比較して約2%縮小した。

 その背景には、折からの不況の影響もあり、ビルのオーナーがビルメンテナンス会社にコストダウンを求めることが増えている影響がある。不動産への入居率の低迷、テナントの賃料値下げなどによって、オーナー企業のビジネスもまた、シュリンクを続けているのだ。

 その結果、ビルメンテナンス業界では価格競争が激しくなり、入札制度が拡大。業界として曲がり角に差しかかっている。


採用条件は「持ち家」「独身」?
低賃金で生活できないから皆辞めていく

「私の知る限りだけど、ビルメンテナンスの中途採用試験で、面接官は受験者が持ち家であるか、独身であるかなどを確認することが多い。毎月家賃がかかる都内のマンションなどに住み、家族を養うのは、こんな給料では難しいからね……」

 ビルメンテナンス・ワーカー(以後、ビルメンと記述)として十数年勤務してきた佐藤義則さん(仮名・58歳)が、淡々と答える。