米シリコンバレーで最も注目が集まるセラノスの刑事裁判を滞りなく進めることは、裁判を担当するエドワード・ダビラ連邦地裁判事(69)にとって十分に困難な仕事だった。そこへ水道管が破損する事故が起きた。「サンフェルナンドストリートとファーストストリートが交差する角に穴が開いており、黄色いジャケットを着た大勢の男たちが中をのぞき込んでいた。何かあったらしい」。ダビラ判事は最近のある日こう語った。トイレが使用不能という理由で同氏は公判を中止。詐欺罪で起訴されたセラノス創業者エリザベス・ホームズ被告の裁判で、証言予定が一日分ふいになった。重要な訴訟ではあらゆる種類の邪魔が入りうる。だが今回は異例の災難続きで、ダビラ判事は数カ月に及ぶ公判の進行に神経をとがらせている。同氏は複雑な訴訟を前に進める一方、口論する傍聴人、数独(数字のパズル)で遊ぶ陪審員、記者がキーボードをたたく絶え間ない音、度重なる技術トラブルに対応してきた。裁判官としての20年のキャリアにふさわしい穏やかな存在感を保ちつつ、注意を促す場合でさえ、真顔でジョークを言ったり、スポーツの話題に触れたりして雰囲気を和ませることが多い。