出会った人を好きでいたいから、淡い付き合いを求める
実は少し前に、長く療養中だった大切な人を亡くしました。
いい加減な僕はずっと一緒にいられたわけではなかったし、お別れが近づいていることもわかってはいたけれど、僕の「個」に少し距離をおいて寄り添ってくれた一人の女性がこの世から旅立つことには、やはり圧倒的なさみしさを感じました。
このさみしさを、僕はずっと抱えながら、生きていくのでしょう。
そして、さみしい自分を認めることが、前を向くためには必要なのだと感じています。
自分が死ぬのか、相手が先立つのか。
どんなに大切な人とも、いつかはお別れの時がきます。
ずっと一緒にいられる約束はできないのだと思えば、目の前の人の存在がいっそう尊く、愛おしく感じられるのではないでしょうか。
孤独な自分と、孤独な君。
少しの距離を空け、相対することで、人はもっと想いを寄せ合える。
人間の持つ孤独の力を美しく使いたいものです。
(本原稿は、中野善壽著 『孤独からはじめよう』から一部抜粋・改変したものです)