テクノロジーの急速な進化とともに、企業に蓄積されるデータの量は爆発的に増加している。しかし、たまったデータの中からインサイト(洞察)を導き出し、行動変容に結び付けて、ビジネスの成果を上げている企業は少ない。どうすれば、データを企業変革やビジネス変革の起点として活かせるようになるのか。世界中で高く評価されているビジュアル分析プラットフォームを提供するセールスフォース・ドットコムTableauの佐藤豊カントリーマネージャーが解説する。
*本稿は10月27日にオンライン配信されたダイヤモンドクォータリー フォーラム「DXその先へ X経営の時代」における講演内容をまとめたものです。

「データドリブン意思決定」の実践で、
持続可能な競争優位性を手に入れる

  テクノロジーが進化した現代においては、さまざまな場所から、ありとあらゆるデータを取ることができます。その結果、これまでのように、経営者が勘や経験と度胸、あるいはフィーリングで意思決定をしていた時代は過ぎ去り、あらゆる経営判断や意思決定をデータに基づいて行う「データドリブン意思決定」(Data-Driven Decision Making:DDDM)が求められるようになっています。

 自社の目的やイニシアティブに合致する戦略的なビジネス上の意思決定を、ファクト(事実)やメトリックス(評価基準)に基づいて行うことが、ますます重要になっているのです。

 持続可能な競争優位性を手に入れるためにDDDMがいかに重要であるかについて、いくつかの事例を交えながら解説します。

 その前に、まずはTableau(タブロー)について簡単に紹介させてください。当社は、データドリブンな課題解決を変革し、組織のデータを最大限活用することを可能にするビジュアル分析プラットフォーム「Tableau」を開発している会社です。2003年に設立され、日本市場には2012年に参入しました。2019年にセールスフォース・ドットコムの一員となり、社名をTableauからセールスフォース・ドットコムTableauに変更しています。

変革の時代に求められるデータドリブンな意思決定セールスフォース・ドットコム Tableau
カントリーマネージャー
佐藤豊
Yutaka Sato

 当社は創業以来、「あらゆる人がデータを見て理解できるようにする」(We help people see and understand data)という、変わらぬミッションを掲げています。

 企業が持続的に成長するためには、従業員全員がデータを見て、理解できるような形にしておくことが重要だと考えており、当社はそれをビジュアル分析プラットフォームの提供などを通じて支援していきたいと考えているのです。

 現在、多くの企業がDXに取り組んでいますが、当社はその取り組みのすべてが最終的には「データトランスフォーメーション」につながると予想しています。その変革のうねりの中で、中心的な役割を担い続けていきたいというのが、私たちの目標です。

 Tableauは、世界的なIT調査会社ガートナーがほぼ毎年発行する市場調査リポート「マジック・クアドラント」の「BI(ビジネス・インテリジェンス)プラットフォーム評価」で、9年連続ナンバーワンの栄誉に輝いています。

 なぜ、これほど高い評価を受けているかといえば、直感的で楽しく、パワフルなデータ分析が可能であることに加え、自動化されたダッシュボード、AIや機械学習などの機能を駆使しながら、データを“共通言語”としてコミュニケーションが交わせるという特徴を持っているからです。

 さらに市場普及率が高いTableauは、圧倒的なユーザーコミュニティを形成していることも大きな強みです。世界で500以上、日本国内には36以上のユーザーコミュニティがあり、日本のグループの活動は、世界で最も高く評価されています。

データを「見る」「理解する」
「ビジネスの効果に結び付ける」

 冒頭でも述べたように、テクノロジーの急速な進化によって、私たちはさまざまな場所から、ありとあらゆるデータを取ることができるようになりました。すべてのデバイスは、データを取るためにインターネットに接続されていますし、企業もアナログだった業務をデジタルにシフトするため、いろいろなシステムを導入しています。

 その結果、企業の中には膨大な量のデータがたまっているわけですが、ただためておくだけでは、データはまったく活かされません。

 では、どうすればデータを活かせるのか。まずはデータを「見る」。次にTableauのようなビジュアル分析ツールやAI、機械学習でデータを「理解する」。そして、理解したら終わりではなく、行動を変容させて「ビジネスの効果に結び付ける」という3つのステップを踏むことが大切です。

一個人だけでなく、ありとあらゆる業務や部門がこのステップを踏んでいくことが、DDDMの基本だといえます。