企業にたまったデータをもとに行う意思決定には、3つの種類があると考えます。一つは「マクロな意思決定」。これは、経営者が分析ツールのダッシュボード上に表示されるファクトの中から市場の変化を読み取り、それに基づいて経営判断を行うことです。
2つ目は「ミクロな意思決定」。部門ごとや従業員一人ひとりの行動に直結する、現場での意思決定です。
この2つだけでも十分だと思うかもしれませんが、もう一つ、変化が激しく先が見えない現代においては、「変化対応の意思決定」ができる環境をいかにつくっておくかが重要だといえます。変化の原因を深掘りし、それに対応してPDCAサイクルを回していけるような体制を整えておかなければなりません。
なぜ「変化対応の意思決定」が重要なのかといえば、それを行うことで、業界における優位性が確保できるからです。具体的には「生産性向上」や「コスト削減」「事業成長」「カスタマーサクセス」「リスクコンプライアンス」などの優位性が得られます。
それ以外にも、データに基づくことによって、自信を持って意思決定ができるようになるという定性的なメリットもあります。
データドリブン意思決定に
立ちはだかる3つの壁
しかし、DDDMを全社レベルで行おうとすると、いくつもの壁が立ちはだかるものです。なかでも大きな壁は、次の3つです。
1つ目は「企業風土」の壁。そもそもデータの価値を認める風土が根付いておらず、勘や過去の経験に囚われながら意思決定をしている企業は、その発想を大きく変えなければなりません。
2つ目は「データ環境」の壁。そもそもデータが使える状態に整理されていない、デジタル化されていない、必要なツールが与えられていないという状態では、利活用したくてもできません。
そして3つ目は、「人材」の壁です。「データサイエンティストが不足している」というニュースを目にしたことがある人も多いと思いますが、データ活用のためにはデータサイエンティストを養成しなければならないのでしょうか。そんなことはありません。
データ分析の専門知識は限られていても、ビジネスを知っている人、何かを変えたいと思っている人がデータを扱った時に、データ活用のインパクトは最大化します。そういう人材をどれだけ、どのように育成していくかということが大事です。
繰り返しになりますが、経営層をはじめとする一部の人の意思決定だけに頼ろうとすると、DDDMには限界や課題が生じてしまいます。それぞれの現場や、従業員一人ひとりに至るまで、ビジネスに関わる誰もがデータドリブンな意思決定をできるようにすることが、競争力の向上につながります。
当社は、創業以来の信念として「人は誰でも無限の可能性がある」と考えています。適切なツールがあって、適切な活用方法を知れば、人の可能性や、人がもたらすインパクトは最大化します。それを経営層や従業員の数で掛け合わせば、可能性やインパクトはますます大きくなるわけです。ですから、データドリブン経営は全社レベルで行うべき取り組みであると、当社は考えます。
先ほども述べたように、社内にどんどんデータはたまっているけれど、それを「どう活用したらいいのか」と悩んでおられる企業は多いと思います。
データの中から抽出したインサイト(洞察)を、どうやって従業員の行動変容に結び付け、ビジネス効果を発揮させたらいいのか。その答えを見つけられずに苦しんでおられるお客様もいらっしゃいます。
この課題を解決するためにも、全社レベルでデータドリブン経営を実践できるような環境を整えるべきです。従業員にデータ活用のメリットを体感してもらうことで、全社的なデータ活用文化を醸成するのです。これによってデータドリブンの発想や行動が社内の隅々にまで浸透すれば、インサイトの数も増えていくはずです。