17日午前、大阪市北区曽根崎新地の8階建て雑居ビルの4階にある心療内科クリニックから出火し、24人が犠牲となった。年の瀬の大阪・キタで起きた大惨事。大阪府警は防犯カメラの映像から、殺人と現住建造物等放火の疑いで住所・職業いずれも不詳の谷本盛雄容疑者(61)=意識不明の重体=を特定した。映像には谷本容疑者が液体入りの紙袋を受付前の床に置いてしゃがみ込んだ直後、一気に火の手が上がる様子が残されていた。犠牲者の多くは避難口をふさがれ、一酸化炭素中毒であっという間に死亡したとみられる。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

事件発生直後にメディアが
「放火の疑い」と速報した理由

「大阪ビル火災」で被害を拡大したペンシルビルの火災リスクペンシルビルとは1980~90年代のバブル期に大都市で流行したビルで、狭い土地に建てられた10階前後の建築物を指す(火災の現場となったビル) Photo:JIJI

 現場はJR大阪駅に近く、高級クラブや飲食店などが立ち並び、昼夜を問わず人通りの多い繁華街。全国紙社会部デスクに送ってもらった動画を見た。4階の窓から吹き出すオレンジ色の炎。その上の階で手を振って助けを求める女性。何とか救出された人々がビル前の路上にぐったりと体を横たえる。「もう少しで救急車が来る」「頑張れ」。必死に声を掛け、心臓マッサージを続ける人々…。

 数十台の消防車や救急車、パトカーが赤色灯を放射し、ビルからは酸素吸入器を装着した負傷者が毛布にくるまれ、次から次にストレッチャーで搬送されていく。火災特有の鼻をつく臭いがするのか、規制線の外にいる人々はマスクを押さえながら心配そうに見詰めていた。

 ビル4階には「西梅田こころとからだのクリニック」(西沢弘太郎院長)が入居。約80平方メートルのうち25平方メートルが燃え、約30分後に消し止められた。クリニックのホームページによると、心療内科と精神科、内科の診療をしており、17日(金曜日)の診察は午前10時からだった。