欧米スポーツ用品大手の中国販売が消費者の不買運動で失速する中、国産ブランドの安踏体育用品(アンタ・スポーツ・プロダクツ)が急速に存在感を高めている。
そもそも、安踏はすでに国内勢としては最大手だった。自社で工場や店舗を管理する強みに加え、自社の広告塔として米プロバスケットボール協会(NBA)のスター選手、クレイ・トンプソン氏と契約したことが奏功。開幕が迫る北京冬季五輪では、公式サプライヤーとして関係スタッフや中国人選手に自社ブランドのスポーツウエアを提供するなど、追い風に乗っている。
昨年3月にはさらなる幸運に恵まれた。中国の報道機関やソーシャルメディアのユーザーが、綿花の産地である新疆ウイグル地域の強制労働疑惑を追及する業界団体に加盟する欧米ブランドをやり玉に挙げ、ボイコットを呼びかけたからだ。同団体のメンバーである独アディダスやプーマは、政治的な逆風などを理由に、7-9月期(第3四半期)の中国売上高がいずれも約15%減少したと明らかにした。米ナイキも直近四半期の中国売上高が20%減になったが、サプライチェーン(供給網)の混乱が要因だと説明した。
中国の反発を受けて、欧米ブランドの多くはウイグル問題への言及を控えるようになった。だが安踏は、強制労働疑惑は虚構だと主張する中国当局と足並みをそろえ、その正反対の動きに出た。人権侵害の懸念を表明する業界団体から脱退し、新疆綿の使用を続けると表明した。
安踏は本記事に関するコメントを拒否した。同社の2021年上期決算は前年同期比56%の増収だった。直近の財務報告では国産ブランドを応援する「国潮(グオチャオ)」のトレンドが国内勢を支援していると指摘している。